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桑折西山城跡(立体地形図模型)の作成

福島県伊達郡桑折町に、伊達家14代伊達稙宗の居城の桑折西山城がありました。建物は残っていないですが、城のあった場所が山の上で、桑折の街なかからもよく見えます。最近では城跡の整備も進んで、全国山城サミットのイベントが開かれたり、TVの歴史番組で取り上げられたりしているのを見て興味を惹かれました。
立体地形図なら城の立地の状況が理解しやすいですし、城自体の姿もわかるのではと思い、作ってみました。
(※ 本記事の各3Dモデルは、国土地理院地形図を元に作成しています)
桑折西山城について
- 福島盆地北部は、伊達家の始まりから米沢に移るまでの本拠地であった場所になります。伊達稙宗が、長らく伊達家の本城であった梁川城を出て、居城としたのが桑折西山城です。
- テレビでは、政宗の曽祖父にあたる伊達稙宗という人物を語る中で、桑折西山城が紹介されていました。東北の交通が交わる要所への立地、周囲に見せることを意識した大きく立派な城と城下の構え、それまでに無かった先進的な城の作り方など、興味深かったです。
構想
- 国土地理院3D地形図データで桑折西山城跡付近のエリアを立体地形図にしてみます。
建物は残っていませんし、たとえあったとしても地形図には反映されません。とはいえ、大きな山城であれば、城のつくりは地形図からわかる部分も多いのではと思われます。
- 地図の縮尺を変えて何種類か作ってみます。各縮尺ごとにポイントを絞って見たいものが収まるように地図の範囲を指定します。
- 大縮尺:国土地理院地形図の最大縮尺でどこまで細かいところがわかるのか。試してみます。
- 少縮尺:広い観点からの立地を確認するために、位置関係がわかるような広域の範囲を選択します。
- 3Dプリンターの加工範囲をいっぱいに使った大型模型を作ってみます。これまで、3Dプリンターは大きめのものを導入したにもかかわらず、加工時間の制約からあまり大型模型は作っていませんでした。今回は、夜中稼働してやっと作れるような大きさにして、夜間稼働のノウハウを集めます。
- 道路や鉄道、河川等の地図情報は今回の地形図モデル上には特に付けないことにします。地形図模型を地図と見比べて、必要に応じて頭の中で組み合わせることにします。
3Dモデルデータ取得
3Dモデルデータの加工
今回大きめのモデルを作成するために、3Dプリントの出力時間が非常に長くかかります。なるべく時間を短くしたいのでデータを加工します。
立体地形図をプリントしていて一番時間がかかっているのは、地形そのものではなくその下の台座部分です。しかも、国土地理院の3Dデータで付けられる台座は結構な厚みがあり、平坦な地形の場合は、ほとんどの時間が台座の作成に費やされます。
元データの台座部分を薄くできれば造形時間を大幅に削減できます。その一方、台座を薄くすると強度が落ちる心配が出てきますので、どこまでも薄くというわけにもいきません。
今回は、一番薄い箇所が3mm厚ぐらいになるようにしました。最初に2mm厚にして作成したら、少し反りが見られました。
3Dデータの台座部分を薄くします。具体的には、モデルの底面を適当な厚みで切り取る編集を行います。
- Fusion360でこの作業を行う場合、メッシュモデルをメッシュのまま編集できる機能がありますので、それを使います。
- モデルをチェックして、良さそうであれば、ファイル/3Dプリントで修正後のSTLファイルを作成します。再修正したいときに便利なので、通常形式でも保存しておきます。
3Dプリント
今回の3Dプリントの一番のポイントは、夜間プリントへの対応です。
モデルサイズ
- QIDI XMAXでは、造形エリアの短い辺は25cmあります。今回は多少余裕を持たせて最大で一辺22cmの正方形でプリントします。A4版の紙を送る封筒にぎりぎり入るくらいの大きさです。そこまで大きくしないサイズのものも作ります。
フィラメント
- 今回使うフィラメントリールの穴が、取り付け部品の軸より大きくガタがあるので、薄いスペーサーを作って間に入れました。
- 3Dプリンター庫内のフィラメントの取り回し
- 庫内にリールをセットし、フィラメントをガイドに通して上に引き出したときに、プリントヘッドと本体をつないでいるフラットケーブルとの位置関係が微妙になります。フラットケーブルは、縦横無尽に動き回るプリントヘッドに付いて動くため、引き出したフィラメントとぶつかったり引っ張ったりすることがあります。
大抵はどちらかが曲がっていなしてくれるのですが、プリント位置が遠い場所に来るとフラットケーブルが伸び切るため、接触するフィラメントもかなり曲げられてしまいます。また、フィラメントがキャビネットの縁に接触して頻繁に引きずるような音を立てます。
- フィラメントリールが回る際に、本体背面ファンのカバーに擦れていることもわかりました。フィラメントの引き出し方向が斜めになっているのが原因です。
- 元々のフィラメントガイドの位置があまり良いとは言えないので、他の部品に邪魔にならない範囲で手前側に移動させたほうが良さそうです。フィラメントガイドの部品はネジ止めで固定されているので、何かスペーサーを挟めば動かせそうです。
夜間プリント対応
- 今回は、長時間、特に夜間プリントを行います。寒い季節になってきて、夜間は室温も下がります。
- QIDI XPlus、XMAXは、造形エリアがすっぽりキャビネットに収まった形で、さらに、フィラメントリールの取り付け位置が庫内にもあります。これは、もともと高温素材をプリントする場合に造形部分の温度を高く保ち、フィラメントを使う前に温めておくための作りです。ヒートベットによって加温された空気が庫内に保たれます。
- 今回のように外気(室温)が下がる場合でもこの作りは有効に働いてくれるはずです。エアコンはOFFにして夜間稼働をやってみます(エアコンを日中と同様にかけていればこの辺の対応はいらないと思いますが)。
- ヒートベッド、プリントノズルの温度設定はまわりの温度が下がるので少し高めにしました。さらに、上部カバーに空けてある大きな穴をプチプチシートでふさいで開口部を小さくします。
- プリント終了時に自動で電源を切れるようにスライサーのオプションを設定します。
- 夜間の無人運転になるので、トラブル対応の手段を確保しておきます。WEBカメラを置いてプリントヘッドの動く様子を確認できるようにします。さらに、問題が発生した場合にリモートで電源を切れるようにスマートスイッチを購入してコンセントに追加しました。
造形上のトラブル
- 夜間プリントしてみて、大きなトラブルはありませんでしたが、いくつか気になったところはあります。
- トラブルではないですが、プリント開始時の予測時間より結構短い時間でプリントが完了しているケースがありました。面積が大きいか、地形の凸凹が激しいと時間がかかりますが、どのような場合に予測と実際の差が大きくなるかはよくわかりません。
造形物紹介
縮尺が異なるごとに見るポイントも変わってきます。
①福島盆地全景
- 中央が狭くなったひょうたん型。
盆地内は吾妻山、安達太良山方面の南西側から北東に向けて阿武隈川に沿ってゆるやかに低くなっています。同じ盆地内でも結構標高差があります。 - プリント時間:18H 45min(22.3✕22.3cm)
②福島盆地北側(旧伊達郡)
- 阿武隈川の流域の平地とそこから一段高い段丘、盆地を囲む山地で構成されています。
- 過去の山崩れで凹んでしまった半田山(旧半田銀山)の形も見えます。
- 高子岡城跡、梁川城跡、桑折西山城いずれも平地から山地に切り替わる高台に立地しています。領地が広く見晴せる場所です。領地からもよく見えます。
- プリント時間:14H 18min(22.3✕22.3cm)
③桑折町中心部
- 阿武隈川流域から一段上がった段丘上に桑折町の中心部はあります。
- 産ケ沢川が山から出たあたりから、段丘上にきれいな扇状地ができているのがわかります。
- プリント時間:7H 27min(12.5✕12.5cm)
③桑折西山城周辺
- 山のふもとが、産ケ沢川に侵食されて段丘面より低くなっています。西山城の北側は谷が深く、産ケ沢側が城を囲んで堀の役割をしているのがよくわかります。
- 西山城は後方の山地から連なった突端に位置しています。
- プリント時間:9H 5min(14.9✕14.9cm)
④桑折西山城
- 本丸、二の丸、中館、西館:連なった山の上に建物が並んでいました。
- 手前には砲台跡の坂があります。
- 高速道路建設で山が削られた様子がよくわかります。
- プリント時間:10H 41min(14.9✕14.9cm)
行ってみました
考察・感想
- 大縮尺で地図を出力すると、それまで出てこなかった構造物が現れてくることがあります。縮尺が大きくなると細かい情報が見えてくるのが新鮮で、地形模型が身近に感じられます。今回は縮尺を上げると城の南側を横切る高速道路の様子がはっきりと現れてきました。
- 立体地形図だと、道路、鉄道、建物、土地利用等地図情報が無いので、どうやってつけようかといつも悩んでいました。ただし今回は地形の凸凹の様子が単色の立体地形図だからこそよく分かるというメリットを感じます。それらの付帯情報に邪魔されなかったのがよかったです。
- 今回作った模型は、国土地理院の地形図データから作っていますので、個々の建物が出てこないのはともかく、あまり詳細の地形も読み取れず、どうしても限界があります。
地形図に現れるような大きな情報で城を見るとなると、城全体の敷地の構成や、城下町も含めた広い範囲の立地などを地形から広く眺めることになります。当然規模が大きな城の方が、地形に痕跡が現れやすくて向いています。
- また、平地に築かれた平城は得てしてその後の土地開発等で当時の姿が残っていない場合も多いでしょう。一方、手を付けにくい場所に築かれた山城が、地形が保全されて当時の姿が残っていやすい傾向があると思います。
- 次に作ってみたいのは、桑折西山城からもよく見える、平安時代に山上に寺院群(3,600坊)が築かれ、南北朝時代には陸奥国府も置かれたという霊山の山頂付近の様子ですね。



































