3Dプリンタフィラメントの種類追加(PETG)

3Dプリンタ(FDM)のフィラメント素材もかつてはPLA(ポリ乳酸)やABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)ぐらいしか選択肢がなかったのが、いまでは値段に目をつぶれば多種多様なプラスチック素材が選び放題の状況になっています。強度、耐熱性、柔軟性、重量、対紫外線、金属色、木質等々興味を引くものがいっぱいありますが、印刷温度が高くて使える家庭用プリンタが限られたり、取り扱いが面倒くさかったりと制限のあるものもあります。
幸い1号機のQIDI XPlusは、いろんな素材が使えることが売りで、高温用の印刷ヘッドもついているので、興味のあったいくつかの素材を試してこの先提供できるようにすることにしました。

素材が異なると、印刷温度、印刷する土台(ベッド)の温度、ノズルの移動速度、冷却ファンのON/OFF等々印刷に影響する各種設定も変える必要が出たりします。ネットでも素材に応じた設定情報がいろいろ見つかりますが、プリンタの機種やフィラメントのメーカーによっても違いがあり結果は変わってくるので、それらの情報は参考にしつつも自分の機械で実際に使用する材料を試してみて設定値を決めるのが一番です。

設定値の確認方法も、これまたネットに出ているいろいろなやり方を参考に、印刷温度、印刷速度、ファン回転数を変えて出力したものを比較して基本の設定値を決め、最後に3Dプリンタ印刷テスト用モデルを出力して印刷の目安としました(一番参考にさせていただいたのは、【CURA Tips】マテリアル毎の適正パラメーターの探し方)。

PETG

おなじみペットボトルの素材のPET(ポリエチレンテレフタラート)の改良版で、より耐衝撃性が増し丈夫になっているようです。PLAより丈夫で曲げにも強く割れたりしにくいものを作りたいときに使えると思います。PLAで使っている通常印刷ヘッドで印刷でき値段も安めなので、良さそうなら日常使う実用品を作るのに活用したいです。

PETGフィラメント

今回購入したのは、中国製のeSUN PETG 1.0KgのNatural色(透明)です。印刷温度:230-250℃、ベッド:加温不要もしくは60-80℃がメーカー推奨値です。透き通ってつやつやしていて釣り糸の太いやつといった感じです。フィラメントを外すときなど、するするとどこまでも糸を引いてきます。

始めに印刷温度の確認です。温度設定を少しずつ変えて印刷し、印刷物の表面の状況から一番適した印刷温度の設定を決めます。印刷温度を途中で段階的に変えた一つのモデルのGコードを作成するのがポイントです。
参考にしたサイトの手順に従って、Thingiverseから印刷テスト用モデル(※)をダウンロードし、QIDIのスライサーソフトでstlファイルからGコードを一旦作成します。実はQIDIから提供されているスライサーには、素材別の推奨設定が既に登録されており、素材を選べばそのままの設定で印刷しても大抵は大丈夫なんだと思います。とはいえ一度ちゃんと確認しておきます。

(※)テスト用モデルは、Temp Tower PLA,ABS,PETG by stoempie August 21, 2017 https://www.thingiverse.com/thing:2493504 (CC BY-NC-ND 4.0)

準備作業として、どこから何℃に温度を変えるかを決めてスライサー上に読み込まれたモデルの対応するレイヤー番号を控えておきます。今回は2本の塔に橋が架かった形のテストモデルの各ブロックごとに220~260℃まで5℃ずつ温度を上げていきます。
スライサーの画面で「拡張子/PostProcessing/Gコードを修正」というところを開いて、先ほどのレイヤー番号と設定温度の変更値を一つずつ入力していきます。そこで入力した内容がGコードを作る際に反映されますので、一通り入力したら、もう一度「準備する」でGコードを作成し直します。
データができたら変更した設定が反映しているか該当箇所を確認します。Windowsのメモ帳(もしくは適当なテキストエディタで)Gコードのファイルを開いて、先ほど一つずつ追加した番号のレイヤーのところに設定した印刷温度があることを確認して閉じます。
後はこのGコードで印刷を行います。注意点は、①温度設定をいじるファイルといじらないファイルの名称は前もって変えておくことです。閉じてしまえば見分けがつきませんし、後に間違う原因になります。②もう一つは、設定変更の入力したものは残るので、きちんと消しておかないと別の印刷の時に悪さをします。
以下が温度設定を変えて印刷した結果です。

220-250℃を通してあまり違いが見られません。表面の光の反射具合や光を通す感じもだいたい一緒です。実は同様の印刷を前にも行っていて、その時は220-260℃に設定しましたが、高温の250-260℃あたりでは表面が荒れて透明度が落ちていました。

なぜ前回と違いが出ているのか分かりませんが、2回の確認結果を考慮して問題なさそうな230℃に設定することにします。温度が低めの方がブリッジの形状はきれいですが、温度が高すぎなければどこでも大丈夫だと思います。

同様のやり方で、温度一定で印刷速度を変えたものです。こちらは元の設定(60mm/s)に対してパーセンテージで変更を指定します。下から100%→116%→50%と推移させました。

ブロックの状態は一緒ですが、柱の間のブリッジが比較的きれいなのは100%近辺です。

冷却ファンの回転数を変えて出力しました(数値の255が100%に当たります)。

こちらは違いが明確です。ファンは回した方がブリッジがきれいなので、100%で回すことにします。

これらの結果から、PETG(eSUN製)の基本の設定値は、印刷温度230℃、ヒートベッド60℃、印刷速度60mm/s(QIDI規定値)、FAN ON(100%)とします。温度や速度が多少変わってもそれほど変にはならないと思います。

最後にこの条件で3Dプリンターの総合印刷テストモデルを出力しておきます。一部茶色い汚れが付いていますが、ヘッドにこびりついていた汚れ(焦げ?)を取り込んでしまったようです。

総合印刷テストモデル:MINI All In One 3D printer test by majda107 February 26, 2018 https://www.thingiverse.com/thing:2806295 (CC BY 4.0)

全体的にきれいに出力されていると思います。かなり無理した造形をさせてプリンタの限界を確認するテストですが、真ん中あたりでブリッジが2本崩れた以外は大きな変形はなく、80度のアーチの裏面もばらけずにかろうじて持ちこたえています。糸引きは少しだけ確認できます。

PETG結構使いやすそうです。施設利用時に使えるフィラメントにしますので、ぜひ使ってみてください。

結構手順が多く面倒な確認作業になってしまいましたが、今後新しい素材を追加するときは効率的にできるようになると思います。後はこの素材の使いみちを考える方に時間を使いたいです。

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