自宅付近の立体地形図を作ろう

1)国土地理院の本気

年を取って雑多な知識が増えてきたせいか、地図を見始めるといろいろと確認したいことが出てきて、ついつい時間を忘れて見入ってしまいます。

今回おすすめしたいのが、自分の住んでいる地域の立体地形図模型を作ってみることです。近頃の自然災害の多さを考えると防災目的でも役に立つと思いますが、それ以上に、住み慣れたはずの場所でも色々な角度から眺めていると新しい発見があって面白いです。

Shinobuyama-3D-model
店舗周辺の信夫山模型(地理院地図3Dデータより)と本当の信夫山

日本の地図の元締めである国土交通省国土地理院が整備している地図が、いろいろな目的で使えるように一般公開されています(https://www.gsi.go.jp/riyousya01.html)。実際にホームページで見てもらうとわかりますが、用途別に様々な種類の地図が利用できるようになっていて見飽きません。最近の大規模水害の浸水エリアを地図に重ねて見れるページもあります。自分が必要な項目だけを選択して特注の地図を作れる機能も3月から公開されています。(あろうことか月の地形図のページまでありました。。。。。)
さらに平面の地図だけでなく、好きな範囲を指定すれば画面上で地形を立体で見ることもでき、それを3Dプリンターで印刷するためのデータまで作ってくれます。操作説明等の手引きも詳しく載っていて、すぐ使えるサンプルも各種ダウンロードでき、ここで詳細を説明する必要はありません。

自分の家の周りの地形、過去の山登りの記録、これから登ろうとしている山の登山ルートの予習、行ってみたい景勝地の地形等々、国内であれば好きな範囲を好きな縮尺で(自宅周辺1Km四方でも、福島盆地50km四方でも)簡単に立体模型が作れます。有名な山岳では立体模型が市販されていたりしますが、こちらはどんなマイナーな山でも川でも海岸でもOKのオーダーメードになります。

ここでは立体地形図のデータの作り方と3Dプリントについて、使ってみて感じた点を盛り込んだおすすめの手順をポイントを絞って説明します。詳しくは国土地理院の操作説明を参照してください。3Dプリンタは当施設のQIDI XPlusでPLAで単色プリントする想定です。

2)立体地形図データの作り方

国土地理院のホームページ(https://www.gsi.go.jp/)内にある「地理院地図」に行きましょう。まずはどんな情報がそこで見られるのか色々見て回ってください。沢山あって全部はとても見きれませんが、地図の動かし方や拡大縮小など画面操作に慣れるのが第一歩です。利用方法のヘルプのページ(https://maps.gsi.go.jp/help/)がありますので、そこで使い方や地図の利用規約にも目を通しておきましょう。

さて、立体地図の作り方です。

  • 地理院地図上で、3Dで切り出したい場所を表示します(画面は信夫山周辺)。
  • 単色でのプリントなので地図の表示はなるべくシンプルな標準地図が良いと思います。どれを選んでも地形は一緒です。もしカラー3Dプリントを発注するつもりなら、地図の種類も厳選してください。写真(航空写真)あたりだとかなり映えると思います。
    地図データ処理1
  • 上のメニューからツール/3Dと進み、大(一辺2048px)、小(一辺1024px)、カスタムから選択します。これらの違いは作成される地図画像の粗さの違いで、地図の範囲とは別物です。地図は赤枠の範囲で切り取られますので、そこに望む部分が入るようにマウスと縮尺を使って調整します。大、小は画面真ん中の十字を中心に、決められた大きさで正方形の枠を作って地図を切り取ります。大、小を選ぶといきなり3Dデータの作成が始まってしまうのと、枠が大きく画面からはみ出しがちなため、地図の範囲を確認しにくいです。地図データ処理2
  • ここでは作業のしやすさからカスタムを選ぶのがおすすめです。カスタムは緯度・経度か、枠の大きさかのどちらかを固定して地図を切り出す範囲を決めてゆきます。まず枠の大きさの数値(256~2048)を指定してその大きさの赤枠を表示させ、その枠を画面上で動かしながら範囲を調整してゆくことができます。赤枠を移動させるには、中央に表示される灰色矢印の十字を動かします。
    地図データ処理3
  • 実は枠の大きさをいくらにしても立体モデルは15cm×15cmのサイズになります(カスタムで長方形にした場合は長辺が15cm)。枠の大きさを変えると地図画像の粗さは変わりますが、立体モデルはどれも一緒のようです(※)。そのため、なるべく作業しやすい大きさに枠を設定した方がよいと思います。
  • 大きさが決まっているとはいうものの、3Dプリンター毎に印刷可能な寸法の制約がありますので、必要に応じてスライサーに読み込ませた後でモデルの大きさの拡大縮小を行います。ずっと大きなものが作りたい場合には、同じ縮尺の地図をタイル状に隣り合ったデータとして繰り返し切り出して、それぞれを印刷して並べていけばよいと思います。
  • カスタムを選ぶ利点はもう一つあり、地図の選択範囲が「緯度*~*/経度*~*、枠の大きさ*」と数値で表示されることです。後でもう一度同じものを出力したいときや、並んだ複数の地図を正確に指定するためには必要な情報になります。3Dプリント用データを保存する際には、同じフォルダにこの地図指定の画面コピーも保存しておきましょう。
  • 範囲を指定して作成された立体地図の画面では、倍率で高さを調整できるようになっています。地形図を立体で見た場合には、実際に周りの景色を見て感じているよりも緩やかに感じられることが往々にしてあります。少し標高を高めにしてやった方が実感に近かったり、地形の凹凸がよくわかったりします。ただし感覚的なもので、今回1.5倍で飯坂温泉をプリントしたところ、山がやけに険しくなってしまいました。
    地図データ処理4
  • 作成された立体地図を画面上で動かして眺めて、高さ方向の調整も含めてこれで良いとなったら3Dプリント用にデータをダウンロードです。
    ダウンロードできるデータは3種類、①STL(単色モデル用)、②VRML(カラー3D印刷用)、③WebGL用(画面上で立体で見るためのデータ)、になります。とりあえず①があればよいのですが、念のため保存用にフォルダを準備して全部ダウンロードしておきましょう。ちなみに、ファイルの名称は固定で付きますので、何回も出力する場合は、こまめにフォルダやファイル名称を変更して、後で分からなくならないように整理してください。
  • 3Dの地形図を出力すると、新しいページが開いて元のページはそのまま残りますので、失敗してもやり直しがすぐできます。その分ページがどんどん増えていきますので不要なページは閉じながら作業してください。

(※)枠の大きさの違いで何が変わってくるか、一辺256pxと一辺2048pxで地図の同じ範囲を指定して比較してみました。画像の細かさは全然違いますが、3Dモデルは同じですね。

  • 256pxの地図画像
  • 同じ範囲の2048pxです
  • 256pxの立体地形図です
  • 同じ範囲の2048pxです
  • 2048pxの3Dデータです
  • 256pxの3Dデータです

3)3Dプリント

  • STLファイルができましたので、これをスライサーソフトにかけて3Dプリンタに渡すGコードを作成します。
  • スライサーにSTLファイルを取り込んだときになぜか地図の向きが縦になってしまいます。地形図モデルを選択して回転の処理で水平にし、ベッド上まで移動します。QIDIスライサー画面
  • 底面が一辺15cmの正方形になりますので、必要に応じて倍率を入力して拡大縮小します。
  • 立体地形図はその土台からして大きな面積をとるため、印刷時間も長時間に及びます。なるべく短い時間で印刷できるようにしたいので、あまり強度が必要な形状ではないことからインフィル量を減らします。10%としましたが、特に悪影響は出ていません。インフィルの形状を変えても時間はあまり変わりませんが、内部に大きな空間が空いてしまうと地形図の出来に影響する心配があるので細かいパターンの方が良いと思います。
  • 後は処理時間を確認してファイルを3Dプリンターに送って通常の手順で印刷するだけです。平べったいのでサポート類は不要です。ちなみに縮小無しで出力した飯坂温泉付近の立体地形図は6時間18分かかりました。

4)印刷結果と課題

印刷自体はきれいに出ています。多少不明な線が見られるのと等高線の境界が少し盛り上がっているようにも見えますが、土地の高低の状況や山の凸凹の形状等よく出ています。信夫山と飯坂温泉です。

  • 信夫山①
  • 信夫山②
  • 飯坂温泉①
  • 飯坂温泉②
  • 飯坂温泉③

この素晴らしい立体地形図ですが、出力してみて困ったこともあります。3D印刷用に2種類(単色、カラー)のデータが提供されていますが、単色だと純粋に地形のみなので、道路や鉄道がどこを通っているのかがよくわかりません。カラーの3Dプリンタでカラー版を印刷すれば一番いいのでしょうが、あいにく当施設にはありません。国土地理院のHPでは立体模型の上に地図を印刷した紙を貼り込むやり方も紹介されていますが、せっかくのきれいな地形が何だかよくわからなくなってしまいそうです。
自分の頭の中で合成するのもよいですが、主要道路、鉄道くらいは手掛かりが欲しいです。

この辺の対応の試行錯誤は、別の投稿で。

(本記事の地図画面、立体地形図のデータはすべて国土地理院地図とその3Dデータによるものです。)

(7/20):国土地理院HPからのデータダウンロードの手順説明は動画も追加しました。
https://youtu.be/erTgaKlylZI

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