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コンテンツマップ2024/04/12 11:20 
activities:products:small_shelf

作業机の中段小物棚の作成

透明アクリルの小物棚です

基板への電子部品の取り付け、はんだ付け、テスト等の電子工作関連の作業を市販のスチールパイプのラックで組んだ作業机で行っています。スライド式の天板を引き出せば作業時に広くなりますが、もともと面積はあまりないので、ちょっと店を広げ始めるとすぐに一杯になってしまいます。正面のラック部分の棚の間隔は結構空いているので、そこに中二階になる棚を作って部品や工具の一時保管用に使えば、広く使えると思い、小物棚を作成しました。

  • 棚の寸法とそこに置くものの大きさから、スペースを最大限活用できるような寸法で図面を起こします。
  • 手持ちのアクリル板(5mm厚)を使い、レーザーカットしたパーツを組み合わせて棚にします。棚板の奥行きが手持ちのアクリル板では全然足りないので、2枚を接ぎ合わせて大きな1枚として使うようにしてみます。
  • 縦横の板を接合するには、以前に立体地形図模型の展示用枠でうまくいった方法を取ります。背板と側板を互い違いの溝で組み合わせて、側板に穴を開けて棚板をはめ込む構造です。
  • 接着等はせずに、はめ込みだけで作るようにします。そうしておけば、後でばらしたり部品の交換も簡単です。


設計

  • パーツ毎に組み合わせの箇所がたくさんあって複雑なので、いちから出来上がりの各パーツ図面を描くのではなく、一旦組み上がった状態の3Dモデルを作成して、そこから各パーツの切り出し図面を作成するやり方を今回はやってみます。モデルの全体像を見ながら、形状、各部の寸法、接合部分の数や配置を調整して形を決めて、その後で図面に落とし込むというプロセスにしたいためです。
  • 制作全体の手順は、
    1. Fusion360で3Dモデルを作成。
    2. 立体のボディから平面画像のSVGファイルを作成するアドイン「Shaper Utilities」を用いてパーツ毎に図面の画像を出力。
    3. 出力画像をInkscapeでレーザーカット用に編集し加工用ファイルを作成。
    4. アクリル板をレーザー加工機で切断し各パーツを作成。
    5. 組み立てて完成。

  • 最初に棚の三面図のスケッチを作りますが、これは切り出すパーツの図面ではなく、あくまで3Dモデルを作るためのスケッチです。側板は一つのスケッチから異なる3種類のボディを作ることになります。
    スケッチからの押し出しで立体モデルにします。立体モデルのボディは、後のちパーツの図面を作る単位になるので、1図面=1ボディになるように小分けにして作ります。

    最初のスケッチ 押出しで出来た立体 はめ込み部分等スケッチを追加修正して、ボディに反映させていきます


  • 2枚をつなぎ合わせるはめ込み部分物を載せる棚板は、2枚を組み合わせて大きな1枚にして使います。接合する辺同士を、お互いにズレが出ないような凸凹のはめこみ形状にして、組み合わせます。
    はめ込み部分は全方向にズレが出ないように直線部分の無い波のような形の基本の線を作り、長さ分だけコピーし作りました。板に厚みがあるので、ぴったりはめ込まれれば、接着しなくとも、多少上に物を乗せても、たわむことは無いと思います。
    背面も1枚で作ると長さが足りないので、2枚の板をはめ合わせる構造にします。
  • 組立時のはめ込み部分は、2つのパーツ間で位置と大きさが一致していないと、いざ組んだときに行き詰まるので、細心の注意で対応する2方向のスケッチを作成します。3Dモデルの状態でもズレや重複などが出ていないかをよくチェックします。
    さらに、ゆるみなく組み上がるよう、すり合う部分の面に寸法の補正(オフセット)をかけます。
    今回はオフセットの方向を間違えて逆に隙間を増やしてしまい、組立時にゆるくなってしまいました。3Dプリントのときと違って、レーザー加工は切断線の両脇に必ず切り代が発生して図面より寸法が短くなるので、その分を適宜プラス調整してやる必要があります。パーツ同士を組み合わせるのでなければほとんど問題ありませんが。

    前から 後ろから オフセットの指定


  • オフセット調整量は、私は5mm厚アクリル板切断では各面0.1mmにしています。レーザー出力やレンズの特性によっても切り代の量は変わってくると思いますので、加工機や加工条件毎が異なれば同じ数値が使えるとは限りません。
  • インストールするとメニューに出ますShaper Utilitiesは、3Dモデルのボディ上の面を指定するだけで、その形をSVG画像にしてくれます。操作が簡単すぎて印象に残らないので、毎回、前やったときのことを忘れていてアドインを探し回ります。
    Shaper Utilitiesは、最近のFusion360のバージョンアップに対応しておらず、使えなくなるという(予告の)警告が出ていましたが、アドオン自体のバージョンアップがすぐに行われて使えるようになりました。
  • 一旦各加工用のファイルが完成した後で、手持ちの材料の長さが図面の寸法に微妙に足りないことがわかりました。最初のスケッチまで戻って5mmだけ寸法を詰めましたが、スケッチの拘束機能のために思うように長さが変更できず苦労しました。
    (5mm詰めても、実際は部品寸法ギリギリで、レーザー切断の位置合わせにもかなり神経を使いました。事前の材料寸法の確認が適当だとこんな事態が起きます)
    一部寸法修正を行って再度編集し、9つのパーツのデータファイルができました。

    外観を透明アクリルに設定(前面) (背面) パーツ一覧


レーザーカット

  • Shaper Utilitiesで出力したSVGファイルを、Inkscapeで開いてレーザー加工用の編集をすると、なぜかレイヤーが存在しない状態になり、後でレーザー加工機の制御ソフトにエラーではじかれます。
    Inkscapeに戻ってレイヤーを新規追加して、対象の図形をコピーして新しいレイヤーに貼り付け、元の図形を削除してもう一度編集をすることになります。
    この辺の作業がわずらわしくて困っていましたが、Inkscapeの「ファイルを開く」から対象のSVGファイルを開くのではなく、Inkscapeの最初の画面上にエクスプローラ等からSVGファイルをドラッグして貼り付けると、既に貼り付け先にレイヤーが存在しているので、この問題が発生しないことに気づきました。
    レイヤー欄が空です こちらが通常
  • 彫刻箇所に保護紙を付けたまま色を載せて、その後はがすと簡単にきれいにできますカットだけでも何なので、棚の1箇所に文字も入れてみました。ここだけレーザー彫刻にします。
    その後で油性マジックで文字の彫刻部分に色を入れました。
    1部保護紙が剥がれて色がはみ出してしまいましたが、透明の棚に色文字があるといいアクセントになります。
  • 幅のあるマスキングテープを使い、全面貼り替えますカット自体は特に問題ありません。アクリルも厚みが5mm位あると出力を上げた加工条件が必要ですが、その分切断箇所の切り代も広がってしまうという面もあって痛し痒しです。
    加工にかけるアクリル板の裏面はもともとの保護紙を剥がしてマスキングテープに貼り替えます。ひと手間増えますが、この効果は絶大です。


  • 一部の寸法を変更したにもかかわらず、背面パーツ用の手持ちの透明アクリル板の長さが数mm足りません。もう寸法変更はしたくないのもあり、たまたまギリギリで収まる寸法の半透明アクリル板があったので、それを使うことにしました。2枚の背面パーツの片方は既に透明板で切断済でしたが、改めて半透明板でカットし直しました。

    カット中 部品は9枚 保護紙を全部剥がします


組立

  • 組み立ててみたら、背面と側面の接合部分のはめ合いがゆるいです。自立できないほどではありませんが、すぐ外れます。後でわかりましたが、設計時のオフセット調整の方向が逆でした。
    仕方ありませんので、数カ所の接合部に透明の両面テープを貼って簡単には外れないようにしました。
  • 材料の寸法問題から背面を半透明のものに変えましたが、組み立ててみると良い感じです。透明で後ろの壁が見えていても仕方ないので、結果的にこちらの方で良かったです。
  • 幅440mm/高さ105mmで大きく、透明度も高いのではめ込み部分が全部透けて見え、組み立てたものを眺めていると結構見映えがします。
    出来上がり(前面) 背面の半透明がちょうどいいです 波模様の接合部はオフセットを入れていませんが、ゆるくはないです


コメント

  • 下のものもよく見えます トレー2枚と電源が載ります 実際に棚の中に設置してみました。
    これまで無駄になっていたスペースに物を置け、また透明であることから下の段の奥にあるものも丸わかりで、圧迫感もありません。使い勝手がよさそうです。
  • レーザーカットによる切り代の影響を補正するオフセットを、今回はかける方向を間違えてしまいましたが、材料の変更で余った部品(背面パーツの片方)があったので、各部の寸法を測って確認してみました(W;横の長さ、V;縦の長さ、単位mm)。
    • 全長/ W:図面 141.0 ⇒ 実測 140.6、V:図面 105 ⇒ 実測 104.9、
    • 角のはめ込みの凸部/ V:図面 10.0 ⇒ 実測 9.8、はめ込みの凹部/ V:図面 10.0 ⇒ 実測 10.3
    • 棚板をはめ込む四角穴/ W:図面 15.0 ⇒ 実測 15.3、H:図面 5.2(オフセット補正有り 0.1×2面) ⇒ 実測 5.5
  • 棚板をはめ込む四角穴のオフセットを正しい向きに入れていれば、図面上は4.8mmになり、今回の差の0.3mmが切り代として減って5.1mmになると考えられます。これは板の厚み分(5mm)の寸法に近いので、ぴったりはまるはずです。


activities/products/small_shelf.txt · 最終更新: 2022/05/28 10:10 by Staff_Ujiie