屋外イベント出店時のデモ用に導入した3Dプリンター:KingRoon KP3Sですが、車で運搬するにしても、他の荷物もあるだろうし、汚れや破損を防げる運搬用の箱を準備しないといけないと思っていました。本体が入る大きさの市販ケースがないか調べてみると、高さが若干足りないものの有望なケースを見つけましたので、それをベースに専用可搬ケースに仕立てました。
屋外で使う可搬ケースとして、以下のような条件を満たせればうれしいです。
まず最初に、中に入れるKP3Sの寸法を測ってみました。 本体はカバーもついていない構造なので占有面積はかなり小さいのですが、縦長で高さがあります。別体の電源もうまく収めないといけません。
この底面と高さが収まるケースが都合よく市販されていないか調べてみました。工具収納/保管/運搬用、もしくはアウトドア用品車載用といったところがラインナップが多そうです。大半が濡れにも強く丈夫で、上に座っても大丈夫なものもあります。
寸法を調べてみると、底面が十分なものはたくさんありますが、高さが足りないものばかりです。縦長のケースはあまり需要がないということでしょうか。
販売サイトをいろいろ眺めていると、やや縦長のコンパクトなケースが目に留まりました。 内寸法の高さが5cm位足りないのですが、本体の底面はすっぽりと入る感じです。上に座ることもできる一体成型の丈夫な樹脂ケースです。
高さが足りないのは、フタに穴をあけて何か別のカバーを付けてやればどうにかなるのではと思えました。一からケースを作るよりもずっと少ない手間でいけそうです。
このケースは、どう見ても同じ商品が複数のブランドで販売されていて、なぜか値段にかなりの開きがあります(1,700~5,000円)。見た目は一緒ですので、実際に製造しているところが同じなのか、金型をコピーしたのか、いずれにせよ機能的には大差ないと思います。一番安かったのは、モノタロウブランドで1,700円位でした(トランクボックス ミリタリーカラー)。色がオリーブドラブしか選べませんが、安いのでこれにします。
モノタロウからケースを購入し、実際にKP3Sを当ててみて寸法を確かめて改造の方針を決めます。
ケースの底への機械本体の収まり具合はこんな感じです。あまり余裕はないものの、緩衝材用のスペースは十分取れます。
高さ方向のはみだしはこんな感じ。フタには座っても大丈夫な強度をとるために全面に格子状のリブが入っています。ここが本体のZ軸部品と当たってしまいフタが閉まりませんので、当たる可能性のある部分を全部切除する必要があります。
必要な加工は大きく2つ、高さが足りない部分のカバーの追加と、中に入れるものの形状に合わせたクッションパッドの作成です。
高さ対策
ケースふたへの穴あけと追加カバーの作成。カバーは、穴とはみ出す部品の形状に合わせて設計し、3Dプリンターで作成の上、フタにねじ止めすることにしました。
クッションパッド
もともとKP3Sが入っていた段ボール箱に、黒い緩衝材がたっぷり入っていたので、これを再利用して新ケースの緩衝材パッドを作ることにしました。硬さも十分で、簡単にカッターで切れるので、ザクザク切って本体に合わせて形を作ります。本体を入れた後に、隙間に電源部を入れるために2段重ねの構成にします。
はみ出すZ軸を保護する追加のカバーは、それぞれの部品の形状をもとにしながらも一体で丸みを帯びた形にします。当然部品が動いても干渉しない寸法が大前提です。Fusion360でデザインして、3Dプリント用のファイルを作成します。
フタの穴を開けた場所が、段になっていて高さの違う平面になっているのと、取り付けネジ穴の場所を裏面のリブを避けて決めないと行けないところに苦労しました。
部品に当たらない範囲で最小のカバーというつもりでデザインしていたら結構複雑な形になってしまいましたが、後から考えると、多少大きめでも市販のプラ容器等で寸法の合うものを加工してカバーにしたほうが、作りやすくて良かったのではという気もしています。
デザインにもとづいて造形しますが、材料には、普段使っているPLAよりも柔軟性があって割れにくいPETGを使いました。色の選択肢があまりないので、オリーブドラブのケースとは合っていませんが、手持ちの透明色フィラメントを使いました。
はみ出す2部品(Z軸の支柱とT型スクリュー)に合わせて切断する形を決めてフタに穴を開けます。裏面の補強用リブがちょうど2部品の間を通るので、その部分を残して穴をあけます。ポリプロピレン(PP)の一体成形で作られており、柔らかさもあって加工はしやすいです。
穴あけは、はんだごてにヒートナイフのこて先を付けて溶かしながら切りました。切断面は溶けた樹脂で凸凹していますので、カッターナイフと超音波カッターできれいに整形です。リブはのこぎり(クラフトソー)と超音波カッターを使いました。切れればなんでも良いのですが、厚みのある樹脂で、かつ回りのリブが邪魔になって作業しにくく閉口しました。
作成した追加カバーの穴に合わせてフタに印をつけて穴あけ、追加カバーとフタはΦ4mmのねじ止めとしました。
残していたリブが穴に近い位置のためナットがうまく入りません。ナットの入る場所をヒートナイフでリブの側面をザクって何とか納めましたが、結構苦労しました。リブの隙間に工具を差し入れての作業になるので、細い工具でないと入りません。あらかじめリブに大き目の穴をあけておけばよかったと思います。
浸水防止に、パッキンをかませておきたかったのですが、今回は”後からはがせる粘着剤”をパッキン代わりに追加カバーとフタの両面に塗っておきました。追加カバーの一部欠けてしまったところも粘着剤でふさぎました。この粘着剤はいろいろなところに使えて非常に優れた製品だと思います。
元々KP3Sを包んでいた黒い緩衝材は、厚さが何通りかありますが、6mmの層を何枚も貼り合わせて厚みを出しています。多少表面は荒れるものの、この層を剥がすこともできるので、必要な厚みに調整することも可能です。 カッターナイフで簡単に切れるので、必要な形状に合わせて切って、いくつか貼り合わせて機械にぴったり合わせた専用緩衝材にします。貼り付けは手軽にかつ接着面が伸び縮みできるように両面テープで行いました。
まず底に一枚緩衝材を敷きます。 その上に1段目の緩衝材を配置します。本体を取り出す際に手を入れる場所として、対角2ケ所の角は開けておきます。それ以外の部分をパッドで側面から密着させガタつきが無いようにします。 一旦寸法に合わせて作ってみて、本体を入れてみたら、ビルドプラットフォームの下の調整ネジが緩衝材に食い込んでいます。寸法通りならぎりぎり隙間ができるはずですが、底に入れた緩衝材に本体が少し沈み込んだためのようです。食い込む部分を薄く切り離しました。
1段目を作って本体を入れて、空いた空間を見ながら電源を入れるための2段目の形を考えます。結構隙間は大きく空いているのであまり苦労はしません。ビルドプラットフォームの上の空間が大きく取れますので、収納時はX軸を下に下げることにして、その上に橋を渡すように2段目のパッドを作ります。 電源もそこそこ重さがあるので、つぶれず、かつケースの中で動かないように、緩衝材の大きなブロックを使って丈夫な橋げたを作ります。 電源ケーブルも入れるので、余裕を持たせておきます。
一通りパッドができたら、入れるものを全部入れてチェックします。大丈夫そうです。
まだ本体の操作パネルの上が空いているので、小物類は袋に入れてそこに収納できます。
入れる予定のものを全部入れてみて、干渉しているところがないか、揺れても大丈夫そうか確認します。まずは、何といっても追加カバーと本体部品に十分な隙間があるかです。こちらは縦横同じぐらいずつ隙間があり、揺らしても接触することはなさそうです。後は、全体に本体とそれ以外との干渉がないかチェックしましたが、大丈夫でした。