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activities:products:pyroelectric_sensor

人感(焦電)センサモジュールの作成

センサモジュール(ケース入り)です

概要

  • この先、展示スペース内で展示物を自動制御することをやってみたいと思っています。展示の演出と節電のため、人が近づいたのを認識して、照明や動く展示物を無人でコントロールするようにしたいです。
  • そのための仕組み作りの一環として、自動ドアや照明の自動点灯に使われるような、人を感知するセンサモジュールを作成しました。


方針

  • 人が近づいたことを検知するために使われるセンサとしてはいくつかの方式がありますが、人の体から発する赤外線の増減を感知する焦電赤外線センサを使用することにします。人感センサとして一般的に使われており、部品も安価に入手できます。
  • Unipi 1.1自動制御の仕組み自体は、Raspbery Piを利用したUnipiUnipi1.1)という市販のPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)製品を使います。そのため、その製品の仕様に合わせてセンサの回路を準備します。
  • これ自体実験的な要素が強いので、設置後の調整、メンテナンスを頻繁に行う必要があると思いますので、それらの作業がしやすいような仕立てにします。
  • 展示スペースを見に見た人には、センサの存在を気づかれないのが望ましいので、目立たないように設置します。
  • 赤外線を発する物体が近づいたことを捉えるだけのもので、個人の特定はできないので、個人情報の考慮は要りません。


人感センサの選定とテスト

焦電型赤外線センサ部品について

  • 焦電センサ製品はいくつかありますが、情報の多そうなパナソニック製センサ(VZ 標準型 EKMC1601112:検出距離5m)にします。この製品は、検出感度の調整が出来ないので、設置の仕方でやりくりします。

<製品仕様>

  • デジタル信号出力
    ※PLC本体側はデジタル入力で受けます。
  • 動作電圧(Vdd):3.0 ~ 6.0V、消費電流 170μA/平均、出力電圧(Vout) Vdd - 0.5V、出力電流(Iout) 最大100μA(0.1mA) 
    ※出力信号電圧は動作電圧 - 0.5Vということなので、2.5 ~ 5.5Vの範囲になります。出力電流は最大で0.1mAということでとても小さいです。
  • 電源投入時回路安定時間 30s 
    ※電源を入れて30秒間は正しいデータが出てきませんが、基本はつけっぱなしになるので問題ありません。
  • 動作温度-20 ~ +60℃ 
    ※設置する福島市の気温の範囲からは問題ないでしょう。
  • 非防水、非防塵構造 
    ※雨風を避けた場所に設置することになります。
  • 検知範囲のパターンを見ると、センサのレンズに正対する方向の移動より、横からの移動に対して検知範囲が広くなっています。上向きか下向きになるように設置するのが良いようです。


感度テスト

購入(秋月電子通商)したセンサ部品の感知具合を、設置予定の展示スペースで試してみます。

  • 集電赤外線センサについて、ガラス越しでは使えないという情報があって気になっていました。ショウウィンドウの内側に展示物と一緒にセンサを取り付けるつもりでいたからです。
  • 抵抗1個でつなぐだけですセンサの動作確認用に、ネット記事を参考に、Arduino Uno(R3)につないでセンサが感知したらLEDを点灯させる回路をブレッドボード上に組みました。センサ用の5V電源も取れて、センサデータもそのまま接続できてとてもシンプルにできました。
    センサデータによってArduino Uno上のLEDを点灯させるプログラム(スケッチ)を入れて、ブレッドボードをつないだArduino Unoに近づいたり離れたりしてみるとLEDが点灯(点滅)して動作しています。準備完了です。
    このために初めてArduinoを使ってみましたが、使いやすかったです。
  • 早速、設置予定の展示スペースに移動して、センサ回路付きArduino Unoを窓ガラスの内側に置いて、外に立ってみたら、どこにいても全くLEDが点きません。反応が鈍くなる等ではなく、全然反応しないレベルです。これでは室内への設置はできません。
  • 次にセンサを屋外に出してLEDの点灯を確認したところ、思いのほか反応がよいです。道の向かいの端まで離れても感知しています。反応良すぎです。適度に感度を抑えられるように設置方法を工夫しないと逆に使いものになりません。
  • 屋内設置の可能性は全くないことがわかったので、建物の外側への設置に変更です。雨が当たらず適度に感度が保てる設置場所を考えないといけません。結構難題です。


センサの回路

センサを動かすための電源供給とセンサからのデータをPLC本体に渡すために必要な電子回路を設計・実装します。
これまでに電子工作のキット製作経験は何度もあるので実装作業は慣れていますが、回路設計については全くの初心者です。そのため勉強がてらの作業になるので時間がかかります。

焦電センサの信号の出力電圧と、それを受けるUnipi1.1のデジタル入力の電圧範囲が合っていないので、主にそこを合わせるためにやりくりする回路です。

  • センサ仕様より、出力信号電圧は2.5 ~ 5.5Vの範囲になります。
  • Unipi1.1のデジタル入力の仕様は、ON:7 ~ 24V, OFF: ~ 3V, 不定: 3 ~ 7V となっていて、センサの信号はそのまま送ったとしてもUnipi1.1にONとして認識されません。Unipi1.1自身は5V電源で動くのですが、インターフェースを業務用のPLCで一般的な24V機器に合わせているためと思われます。Arduinoの簡単さが懐かしくなります。
  • センサの出力にトランジスタの増幅回路をつないでUnipiの入力電圧レベルに合わせてやります。流す電流も5~6mA程度に増やします。
  • 増幅回路自体は、センサのデータシートに載っている単純なものを使いますが、抵抗値を自分で決める必要があります。一旦調べながら計算してみましたが、結果にあまり自信がないので日和ってしまい、参考書籍にあった同様の回路の定数を一部アレンジして使用しました。
  • センサを動かす電源は、Unipi1.1の主電源5Vから取るか、もしくはUnipi1.1内のデジタル入力用12V給電端子から取ることもできますが、他の機器用にも使う予定の別の12V電源を用意して、そこから取ることにします。センサの動作電圧用に12Vから5.5V(その場合センサからの信号電圧は5V)を作って供給し、出力信号の増幅回路用にも12Vを引いてきます。
  • 注意事項として、今回の増幅回路を通すとセンサのON/OFF信号が反転してUnipi1.1に取り込まれるので、PLCのプログラムではそれを考慮して作成するようにします。センサからの無信号時は12Vにプルアップされて常時ONとなり、センサが感知するとトランジスタに電流が流れてOFFレベルになります。
  • いろんな電圧が出てきましたが、引き回す配線をなるべく少なくしたいので、センサのケース内で12V → 5.5Vの電圧変換と信号増幅を行って、Unipi1.1との間の数mのケーブルは12V/GND/センサデータの3本のみにします。

    作る回路のブロック図 詳細:手書きで汚くてすみません
  • 回路を決めたら、基板上に実装する前に、ブレッドボード上に配線して動作をチェックします。

    動くかブレッドボード上で動作確認します 各部の電圧が予定通りか確認します


ユニバーサル基板スペーサー作成

  • 1時間ほどの3Dプリントです使用するユニバーサル基板の四隅のスペーサー用の穴がφ2mmで、手持ちの3mmスペーサーが使えません。2mmスペーサーを購入することはせず、ケースに取付穴を開けずに両面テープで貼り付けるようなスペーサーを3Dプリンターで作って使いました。

    詳細はこちらのページ


ケース

  • センサの電子部品の基板を収めて設置するためのケースが必要です。
    • できるだけ小さく、目立たない色、形
    • 必要な基板が無理なく収まるサイズ
  • この条件で、市販品で使えそうなものがないか探しました。なければ手間をかけて自作です。
    たまたま、ちょうどよいものが見つかったので、それに追加の加工をしてセンサ基板を収めます。

< 選定 >

  • 2個入り!100均の樹脂ケース(絆創膏用ケースとのこと。同じものが別の袋で他用途のケースとしても売ってました)
  • 単純な構造ですが、設置後も蓋の開閉が簡単にできるので、メンテナンスに便利な作りです。



<追加工>

  • 少しずつ穴を広げました焦電センサのレンズ部分を外に出すための穴と本体との接続用のケーブルを引き出すための穴を開けました。
  • 穴開け加工には、超音波カッターZO41を使いました。使っているうちに調子が悪くなってくることの多い機械ですが、今回はこれまでになくスムーズに切ることができ、加工終わりまでなんとか持ちました。


電子部品基板組立

  • ユニバーサル基板のセットの中で、今回のケースのサイズに合った3×7cmのものを使いました。リード線の切れ端をはんだ付けして配線しました。
  • 配線図は最初手書きで描き始めましたが、基板の表裏で頭の中がこんがらがってしまうので、探してみたら手配線でも配線パターンを作図できるソフトがあるようです。
    ただし今回は、基板スペーサーをFusion360で設計したときの基板のスケッチデータがあったので、そこに部品と配線のスケッチをそれぞれ追加してパターン作成とチェックをやりました。Fusion360は電子回路設計CADのEagleを取り込んでいるので、本当はこのあたりが楽にできるのかもしれませんが、今後の課題ですね。
  • 基板スペーサーを3Dプリンタで自作し、ケース内への基板の固定に使用しました。
  • 樹脂製ケースで放熱孔なし(隙間はあるので密閉にはならない)になります。センサの消費電力は小さいので発熱も少ないはず。

    こんな風にセンサ部品が付きます 部品側 裏面


ケーシング

  • 焦電センサ部品が、はんだ付けされた3本のリード線のみで基板に固定されていて頼りないので、シリコン粘着剤を基板との隙間にたっぷり充填して補強しました。
  • センサーモジュールとUnipi1.1間の接続ケーブルは、ケースへの引き込み部分の位置固定のために熱収縮スリーブを2枚重ねで使用。また、取り外しを考えて基板には直結せず、コネクターを経由して接続しました。
  • 自作基板スペーサーに両面テープを付けてケース内に固定しました(作動テスト後に)。

    充填剤大盛り 熱収縮スリーブを2箇所に分けてその間にケースを通します ケース内に部品を固定


作動テスト

ケースに基板を仮固定した状態でUniPi 1.1と接続して、センサモジュールの反応とUnipi側の信号受信状況を確認しました。

  • Unipi 1.1へは、外部電源を使用したデジタル入力として接続します。Unipi側のジャンパーピンで外部電源使用の設定をし、センサにはACアダプター(12V)を接続、センサからの出力データと0Vの線をUniPiの所定の端子に接続します。
  • UniPi 1.1の入力側の接続端子は、初めて見る三角形の部品で、どうやって線をつないだらよいかがさっぱりわかりませんでした。いろいろ調べて、WAGOというドイツのメーカーのもの(WAGO 236)だとわかり、その日本法人のHPで使い方がわかりました。
  • 本来は専用の治具を使って結線するようですが、端子の穴に入る大きさのマイナスドライバーでも代用できます。
    とはいうものの、中の金属のばね構造がわからないままドライバーを突っ込んでも、線を差し込める隙間が開かず、力まかせだと取り付けた基板ごと壊してしまいそうです。
    差し込んだドライバーの先をてこのように使って取付部の金具をずらす仕組みです。コツさえわかってしまえばそう力がいるものではないのですが、最初はかなり不安になりました。
  • Unipi1.1上の入力端子毎に付いている赤いLEDの点滅で、センサ信号を受け取っていることが確認できました。センサの説明にあった通り、現在の接続方法ではON/OFFの論理が逆転されています。何も無ければLEDは点灯で、センサが感知するとLEDは消灯になります。

    WAGO236 LED点いています


設置

展示スペースのセンサモジュールを設置する位置を決定しました。

  • 確認用のUnipi出来上がったセンサモジュールとUnipi1.1を現場に持ち込んで、センサを仮止めしながら感知状況をLEDで確認して、雨に当たらず、かつ死角が最小限になるように道に近いところということで、入り口の軒下に設置することにしました。
  • この取り付け位置からのセンサの反応は、道の真ん中あたりまで離れると反応しなくなり、展示スペース側の道の端を歩いていれば反応します。特別な対策を取ることもなく丁度よいくらいの感度になってくれました。
  • 設置場所の道の右側からと左側からとで感度に若干差がある感じがして、ふと気が付いたのですが、今回センサ部品の基板への取り付け上、向きが斜めになったせいで、センサの検知範囲が左右で異なってしまったようです。


コメント

・勉強が必要な部分が多くてなかなか先に進めません。ただし端折らずに関係する内容をきちんと頭に入れてゆけば、後で役に立つでしょう。

・電子工作関係はある程度のリソース、作業環境を前もって準備しておかないと、いざ必要になったときに様々な理由で中断する状態に陥ってしまいがちです。そのためになかなか続かない印象が強いです。
知識・材料・工具・測定器等作業環境がそろってくれば継続しやすくなると思います。

・センサから送られてくる信号を、PLCの側でどのように使って自動運転につなげてゆくかは、これからよく検討する必要があります。


activities/products/pyroelectric_sensor.txt · 最終更新: 2022/05/15 15:05 by Staff_Ujiie