オートマタを作るにあたって、動く仕組みの部分はそれほど複雑なものは必要ないと思う一方で、シンプルな仕組みを熟知して使いこなしていけるようにすることは重要に思えます。基本的な機構について参考書で知識として情報を頭に入れることと、その機構について自分なりの理解をして評価してゆくことで、使える引き出しになっていくと思います。
ここでは少しずつこのプロセスを回して整理していきます。
参考とした書籍は、主に以下の2冊です。どちらも、基本となる機構をわかりやすく整理して説明してあり、よかったです。内容的には重複している部分も多いですが、異なる著者が同じものに対すして説明している内容の違いを意識することで、理解が深まるところもあります。
知識として頭に入れた機構の情報を自分から使えるレベルに持ってゆくには、色々なやり方がありますが、実物を見て動かして実感する体験が一番近道だと思います。とはいえ、身の回りに都合よくそんな機械類が揃っていることもないでしょうから、模型を自分で作って、それをいじって実感するのが良いと思います。
今回は、3Dプリントで作れるオートマタの設計が一つのポイントですので、機構の模型も3Dプリンターで作って、設計~製作のノウハウも同時に集めていきます。
機構も様々なものがありますが、その中で同じ要素も何度も繰り返し出てきます。完成品を何種類も作るのではなく、使いまわしが出来る共通部品を作成し、自分で組み立てて試すことができる汎用性の高いものにしようと思います。
ベニヤ板やMDFなどに等間隔で穴の空いた、ホームセンターで買える穴あきボード(有孔ボード/パンチングボード/ペグボード)を土台にし、その穴を利用して歯車やリンク類を取り付けて機構模型として使えるような部品群を制作することにしました。穴の間隔を基本の単位として、取り付ける部品の長さや大きさを何通りか用意します。
ベースとなる穴あきボード(有孔ボード/パンチングボード/ペグボード)は市販のもので何でもよいですが、いくつか条件があります。
穴開きボード上に固定する回転軸の部品。歯車、カム、リンクロッド等の各部品をそこに取り付けます。
必要な要件としては、
力のかかる箇所もあるので、積層造形の3Dプリントでも強度が取れる設計をするのがポイントです。
まずは、ボードから突き出す高さを減らす対応と、取り付けた部品の外れ止めの追加です。
固定軸はボードの穴4つで固定するのを基本にしていましたが、その場合、軸同士の最短距離が結構広くなってしまい、各部品も大型になってきました。その分、一つプリントするのに時間がかかってしようがないので、もう少しコンパクトにまとめられるよう、穴3つで固定するバージョンを作りました。
歯車同士を組み合わせて回転させたときの減速/増速比は、各歯車の歯数の比率の逆数(歯数が10の歯車に20の歯車を組み合わせて回したら、20の歯車の回転速度は1/2に減速)になります。
大きく減速したいときは、それだけ歯がたくさんある大きな歯車を使えばいいことになりますが、現実的には大きさにも限度があります。そんなときは2枚の歯車を一体化した部品を使うことで、限られたスペースでも大きな減速比を作り出すことが出来るようになります。
市販のタミヤのギヤボックスを見ても、連結歯車を何段も繰り返し重ねて大減速できるようにし、様々な減速比を選べるようにもしています。
今回は、歯車と回転軸の間に回転しやすくするために入れているスリーブを、逆に歯車同士を固定する部品にアレンジして使います。
前述の連結歯車の組み付け例に、もう1つ減速用の歯車を追加して、そこから往復運動をさせるようにしてみました。2段の減速20T:40T&14T:40Tで、合わせて5.7:1の減速になります。ハンドルをくるくる回しても、見るからにゆったりと回ってくれます。
歯車は、動きをズレなく伝達する手段として一般的ですが、見た目も印象的で使いたい気にさせる機構です。
前述の回転軸部品に取り付けて使います。歯数が異なる数種類の歯車を作って以下の内容を試せるようにします。
歯の厚み変更と機能追加を行いました。
直線状に歯の並んだ棒状の歯車です。円の歯車と組み合わせることで、回転運動を直線運動に変えたり、その逆もできるようになります。
一定の回転運動する軸の動きを、速度を変えたり往復運動に変えたりするのがカム機構になります。回転するカムとそれに接触して動く従動節(カムフォロワ)の2つで構成されますが、単純な動きから複雑な動きまで動く量や速さを連続的に変える動きを作れるのが特徴です。
軸に取り付けて円弧の動きをする棒です。もう一方に別のリンクロッドを取り付ければ色々な動きが作れます。
軸に通したスロット穴に沿ってスライドして、回転運動から円弧や往復運動を作り出す部品です。
ボードに取り付けて使う固定回転軸に対して、部品同士をつないで一緒に自分も動く、固定されていない回転軸です。求められるのは、他の部品に接触してその動きを妨げないことと、つないだ部品が横方向にぐらつかないようにしっかり支えることです。
展示スペースなどで人に見てもらうために、手頃なボード上に組み立てた、モーターで動く機構模型の作例です(別ページ)。
(つづく)