▽このページの目次▽
経緯
作成の方針
設計
プリント
設置
感想
ロールスクリーン破損部品のリプレース
ロールスクリーンを上げ下げする紐の取り付け部分がこわれたので、代替品を3Dプリントで作りました。
経緯
店舗室内の窓に付いているロールスクリーンは、この物件を借りたときから付いているもので、結構年数がいっていると思いますが、なにせ窓が多いので、新調せずにそのまま使っています。
先日スクリーンを下げようと思って紐を引っ張ったら、紐が落ちてきました。ロールスクリーンの下の棒に紐を固定している樹脂部品が真っ二つに割れて外れていました。
透明のポリカーボネート製と思われる樹脂部品ですが、年数も経っているし、窓で直射日光にも晒されるしで経年劣化で割れてしまったと思われます。
このロールスクリーンは真ん中の紐で上げ下げするタイプなので、紐が無いと脚立に登って天井から直接引っ張って下げるしかなくなります。手の届く範囲で上げ下げするように気をつけていましたが、どうしても不便なので、あきらめて紐の取り付け部品を付けることにしました。
この部品だけでは売ってないのではと思い、3Dプリンターで代替品を作成することにしました。形は単純なのでなんとかなるレベルだと思います。
実は3Dプリントしている最中にメーカー純正の補修部品販売サイトを見つけてしまいました(
トーソーパーツオンラインショップ
。まさに壊れた部品(フラットグリップと言うらしいです)もそこにありましたが、せっかくなので自作した部品を使ってみて、もし不具合があったら購入を検討することにします。
作成の方針
オリジナルは裏側でバネ構造で固定する仕組みが付いていますが、ロールスクリーンの棒から外れなければよいので、バネ無しで横から入れるだけの単純な一体成形の構造にします。
使用する樹脂材料はPLAだと直射日光であまり持たないと思いますので、丈夫で見た目もオリジナルに似た透明のPETGを使うことにします。
設計
長期間ロールスクリーンのパイプから外れることなく、引っ張り紐をきちんと固定し続けるように、丈夫さ優先で一体成形にします。横から見たときには馬蹄形になります。
最初にロールスクリーン側の取り付け場所の形と寸法をきちんと調べます。
布が巻かれた状態のアルミパイプの外寸を測って、そこに無理なく横から差し込めるくらいの内径に調節します。
実はパイプの断面が円ではなく、たまご形のような形だったので、できるだけ似せてスケッチ図面を引きます(Fusion360)。
部品の厚みは、薄すぎてたわんで外れてしまわないようにある程度以上は必要です。薄い所で2.5mmぐらい取りました。引っ張ったときに力のかかる上側をより厚くしています。
引っ張り紐の取り付けは、シンプルに真ん中に穴を開けて通し、結び目をストッパーにします。結び目を収納する空間を取るために、下側に突き出し部分を付けました。
横幅や正面から見た形はオリジナル部品の形に似せて丸みを持たせます。
設計は横断面・正面・底面の3方向からスケッチを作成します。
寸法が一番大事な横断面のスケッチから押出しで立体化し、正面スケッチで丸みのある外形を切り出して、底面スケッチで紐通しの穴を開けました。全体にフィレットで切り口を丸めて仕上げです。
横断面のスケッチは、最初にロールスクリーンのパイプの輪郭を円とフィット点スプラインで作り、その輪郭線を基準にオフセット線を引いて部品の輪郭を作っていきます。目安とする基準線を何本も引いて、それを参考に部品の輪郭線をスプライン曲線で作っていきます。
プリント
<スライス>
できるだけ強度を上げたいので、プリントの向きをパイプが縦になるように配置します。こうすると1本のフィラメントが途切れずにパイプをくるむ形で積層されるので、破損した部品のように縦に割れてしまう事態は起きにくくなると思います。
強度の面から、インフィルは100%にします。透明のPETGだと、100%の時は透明度が高くなることも期待できます。
縦にプリントするのでサポートを付けることは必要です。とはいえ、この位置だとサポート除去跡は目立たないと思います。
<プリント結果>
部品の内側に糸引きが多数発生していました。PETGの場合、糸は簡単にパラパラと取れてくるのでたくさんあってもあまり心配は要りません。取り残しがないように注意しながら全体にスクレーパーの刃を当てて取っておきます。
所々に茶色い塊が見られます。これは、プリントノズルの外側に付着した材料(PETG)が長時間熱せられて焦げたものが、プリント中にはがれて付いたものだと思われます。
1箇所だけ、プリント内部に入り込んだ箇所がありました。目立たないように表面を削っておきます。
部品の外側の面は滑らかに光沢のある半透明に仕上がっています。
紐を通す穴は、横向きに成形されたため断面がきれいに円になっているか自信がないので、同じ直径のドリルの刃を通して仕上げておきます。
設置
最初に紐を穴に通して、抜けないように結び目を作ります。穴がきつめでなかなか入らず、ピンセットで押し込みました。
スクリーンの布が巻かれたアルミのパイプに作った部品を横から通してゆきます。最初はきつくて入らないかかと思いましたが、ゆっくり通してゆくとスムーズに真ん中まで移動できました。逆に緩みはないので簡単には横ズレしたりしません。
スクリーンを上げ下げしてみましたが機能的にも問題なさそうです。見た目も言われなければ気が付かないぐらいに違和感なくおさまっています。
感想
隣の窓の元の部品と大差ない出来に作れて大成功です。これで別の窓のがこわれても簡単にリプレースできます。
3Dプリンターの用途の1つに、入手できなくなった部品の代替品を作って使うというのがありますが、品質面であまりシビアでない部分は十分使い物になると思います。壊れた部分を直し直しして長く使っていくために役に立つ汎用ツールだと実感しました。