▽このページの目次▽

3Dプリントサービス(DMM.Make)の利用

当施設自体が一種の3Dプリントサービスとも言えますが、外部の3Dプリント業者に製作を依頼する話です。

こちらで所有している数台の3Dプリンターは、どれもFDM方式の個人向け製品です。そこそこきれいに出力できますが、どんなものでも作れるというわけではありません。大きさや精度、素材、製造方法等様々な制約がある中で、ホビー用途向けに比較的安価に使いやすく作れる範囲の3Dプリントを対象にして商品化された機械です。

世間には、産業用に使われるような寸法精度、強度、耐久性を満たす部品や治具を製造できたり、金属で作れたり、フルカラーが出せたり、非常に複雑な形でもサポート不要だったりと、多種多様な3Dプリンターがあります。建物用とかもニュースで出てたりしていますね。
このあたりになると、個人で所有する前提では作られていませんので、そのようなプリントをしたいニーズがある場合、それらの機械を扱っている3Dプリントサービスの専門業者に依頼するのが現実的です。

そのような業者の一つDMM.Makeに、今回自分で設計したデータの出力を依頼してみましたので、興味のある方の参考になるよう、3Dプリントサービスの利用についてご紹介します。

DMM.Makeの特徴

国内で代表的な大手3Dプリント業者といったところでしょうか。法人・個人両方を対象にしています。

価格:他の業者に比べて安い、というのが売りのひとつになっていますが、法人や業務でなく、趣味の範囲で自分で3Dプリントに払う費用と考えたら、見積もり金額を見て高額という印象を受けると思います。もともと3Dプリントサービスという、業務ニーズがメインのビジネスの相場がそういうものということでしょう。その中で比較するとDMM.Makeは安いということです。
ときどき期間限定で特定の素材が安くなるキャンペーンもやっています。

品質:比較する情報もないですが、高価な業務用3Dプリンターを専業の技術スタッフが使ってプリントするので、個人が片手間で3Dプリントするのに比べれば、ずっと高品質であろうと期待はできます。

納期・配送:素材ごとに発送の目安が表示されています。遅くともその日数以内でと幅のある表現ですが、注文の入り具合で機械に掛けるスケジュールが変動するためでしょう。出来上がったら石川県の工場から日本中に宅配便で発送されます。どうしてもすぐに必要という場合は、特別価格の即納オプションも選べます。

ラインアップ:3Dプリントの方式も、機械の種類も、使える素材も多種多様に取り揃えてあり、ニーズに応じた選択肢が沢山用意されています。このあたりのカタログや資料を見ているだけでもとても参考になります。

また、この業者に特徴的なのが、「クリエーターズマーケット」という、ユーザーの3Dモデルデータで作成した3Dプリントを販売する場を用意していることです。
ユーザーが販売用に設定した3Dモデルが並んでいて、別のユーザーがその中から好きなモデルを選んで3Dプリントしたものを購入することができます。3Dモデルの提供者には、その売上から造形費用と源泉税、事務手数料を引いた金額が支払われます。
この機能が、3Dプリントを依頼するページに一緒に表示されるので、最初はちょっと紛らわしく感じました。当然、自分が販売用に指定しない限り、勝手にマーケットに出されてしまうことはありません。

このサービスは、高性能な業務用の機械や素材を使いたいニーズがあるときに、個人でも容易に利用できる製造手段の一つとして頭の片隅に置いておけばいいと思います。

まずは、DMM.Makeを利用する際は、ユーザー登録が必要です。登録すると個人用のマイページが作成され、データのアップロードも、3Dプリントの発注も、販売をしたい場合も、そこから手続きが始まります。後は登録したメールアドレスでのメールのやりとりで進みます。

発注の流れ

DMM.MakeのHPを見れば、当然手順は書いてありますので、きちんとしたところはそちらを見てください。

継続的に一定量以上の発注がある場合や、量産を前提とした取引など、一部の法人の利用なら法人発注という選択肢もありますが(お得意様待遇になります)、ここでは個人発注の内容です。

全体の発注の流れは、①プリントしたいモデルのデータをアップロードして、②データチェック&見積もり金額の連絡を受けて、③自分がプリントに使う素材を指定して注文するという3段階です。
一定のプロセスが確立されているので、発注者はそれに合わせて機械的に処理していくだけです。データの準備と使用する素材(+機械)の検討に大半の手間がかかります。

とはいえ、たくさんある素材のうちで用途にどれが適しているかなど、スタッフに相談したいことがあれば、問い合わせフォームから別途個別に問い合わせができます。

今回の依頼品

今回DMM.Makeで作ってもらおうかと思ったのはこれです。

鉄道模型の台車(トミーテック/鉄道コレクション/Nゲージ動力ユニットTM-10R等)に取り付ける装飾部品で、かつて路面電車によく使われたブリル76E/77E(かそのコピー品)に見えるようにするものです。

Nゲージ用の台車に付けるため、長さ25mmx高さ6mmぐらいとかなり細かく、所有する3DプリンターのMaestro/ATOM2.5のノズルをφ0.4mmからφ0.2mmに換装して大分ましに出力できるようになった部品ですが、外部委託ならもっと高いレベルで作れるだろうと思ったからです。

前々から機会があればDMM.Makeには頼んでみたかったということもあります。


モデルデータと材料について

DMM.Makeでは、プリントする素材を選ぶというスタイルになっています。使用される3Dプリンター機種は、素材に紐付いていて、素材の種類とセットで記載されています。この3Dプリンター機種でこっちの素材を使ってとユーザーが自由に決められるわけではありません。
素材からなら、多種多様なプリントの選択肢を同列で一覧にできますし、使われている素材も特定の3Dプリンター機種を前提にチューニングされた専用品が多いようなので、素材を選べば自然と使われる機械が決まってくるというのも違和感はありません。

素材ごとに特徴があって、いろいろな3Dプリントができますが、その一方で素材ごとの制約もあります。どのくらいの細かさまで再現できるのか、モデルの一番細い部分の寸法はどのくらい必要か、出来上がったものの強度は、耐熱性は等々、モデルデータの制限事項や素材の注意事項等が詳しく書かれた「デザインガイドライン」が素材別に用意されています。

この資料は前もって目を通しておいて、アップロードするデータに問題がないかを確認しておく必要があります。

アップロードした3Dモデルに標準で行われるデータチェックでは、3Dプリントそのものができるかできないかを機械的にチェックしてくれますが、素材ごとの細かい制約まではチェックされませんので、それ以上は自己責任の範囲になってきます。
一般にプリント可能の判定がされた素材はたくさん出てきますが、使いたい用途に適したベストな素材はその中のほんの一部です。
確認不足で3Dプリントの出来が思っていたのと違うという事態もあり得ると思います。

心配なところがあれば、事前に問い合わせしておきます。

<今回の依頼品>
今回の発注では、モデルの再現度を重要視したいので、「高精細プラスチック」という精密造形向きの樹脂素材をターゲットにします。塗装するにも、追加工するにも都合良さそうです。
3Dプリンターは、「ProJet® MJP 2500 Plus」というインクジェット方式の機械で、32μm(0.032mm)の積層ピッチで造形されます。
ちょうどキャンペーンで価格が30%割引になっていたのもきっかけの一つです。

※ 7月にまた高精細プラスチックの割引キャンペーンをやってくれるようです。


3Dモデルのアップロード

3DモデルデータをDMM.Makeに送るのは、アップロード用のボタンを押すと、パソコン内のデータの場所を指定する画面が開きますので、そこでファイルを指定するだけです。
その後アップロードの進捗・完了が表示され、別途、登録したアドレスにもメールで連絡が来ます。

データをアップロードする上で何か問題があった場合は、(アップロードがキャンセルされて)何も表示されません。
そのときは、アップロードするデータの制限が書かれているところを見て、原因が何かを確認します(私の場合、ファイルサイズで引っかかりました)。

理由がわかったらデータを修正して、再度アップロードします。


<今回の依頼品>
アップロードした3Dモデルデータはこれです。複数をセットで使うので、基本の形をコピーして、プラモデルのようにランナーでつなぎました。数が多いほど1個あたりの単価が安くなることを期待して、20個版、40個版、80個版と作って、それぞれアップロードしました。

x20pcs x40pcs x80pcs

80個版はアップロードができませんでした。ファイルサイズが194MBあり、アップロード制限の100MBを超えていたため、はじかれたようです。
仕方ないので、stlファイルの作成に戻って、設定項目のリファインメントを高から中に落として作り直しました。98MBとなって、今度はアップロードに成功しました。


データ確認・見積もり

アップロードされたデータは、3Dプリントする上で問題ないかどうかのデータチェックが行われます。問題があればデータ不備のメールが、問題なければ、結果と利用できる素材別の見積金額のメールが届きます。データの大きさや複雑さ、システムの込み具合などで変わるとは思いますが、30分もかからず回答が来るイメージです。

もし問題があったら、データを修正して再度アップロードからやり直します。


<今回の依頼品>
80個版はデータ不備のメールも来ました。


データチェックのソフトでチェックしたところ、2項目でエラーがありました。データ不備メールが来なかった20個版、40個版もチェックすると同じところでエラーが出ています。

x90pcs x40pcs x20pcs
80個版は、シェル数161が、制限の100シェルを超えたために引っかかったようです。

エラーを修復しないと先に進めないので、追加費用をかけずにデータ修復する手段を調べ、結局、元データを作成したFusion360の機能でデータ修復を行いました。

修復してエラーが解消した各ファイルを再度アップロードし直しました。


データ修正について

3Dデータ(メッシュファイル)の不備内容ですが、ものによってはかならずしも3Dプリントできないわけではありません。
ただし、シェル数がプリント費用に影響するという情報もありますので、望ましい形にしておくべきでしょう。(参考)[DMM.make]3Dプリント用に.stlファイルのシェル数を一つに結合(削減)する方法

不備の内容とデータ修正方法については、一般的な内容でもあり、ボリュームもあるので、別ページにまとめることにします。

DMM.Makeでは外部のデータチェック用のソフトが紹介されていて、それを使って事前チェックすることが勧められています(業務用のデータチェック・修正ソフトですが、無料版の機能でチェックが出来ます)。
余計な手間を防ぐためにも、データを送る前にチェックと修正はやっておくべきでしょう。

DMM.Makeでもデータ修正作業をサポートするサービス(有料)もやっているようです。

製造金額と発注

データチェック完了メールデータチェック完了メールの後半に素材別の見積もり金額が記載されています。
発注に進む場合は、マイページの3Dデータ一覧から注文に進み、素材をリストから選択し、発注数量、金額を確認して確定します。それで買い物カゴに注文が入ります。

ちなみに、素材別金額は税込み価格で、送料は全国無料です。

価格に関しては、素材別の1cm^3の単価がHPに記載されています。素材同士の相対的に高い安いの目安にはなります。
実際にかかる金額は、素材の使用量、3Dモデル製造時に使用する空間の体積等々いろいろな要素を加味して算出されていると思いますが(計算ロジックはわかりません)、見積もり金額が載ったデータチェック完了メールをもらうまではっきりしません。
数センチ四方のプラスチック素材でもすぐに1万円ぐらい行ってしまいます。


<今回の依頼品>
見積もりメールをもらった20個版、80個版で見積もり金額を比べてみます(※40個版はデータ修復後の見積もりが見当たりませんでした)。
高精細プラスチックの場合、色付き(染色)も選べますが、どうせ塗装が前提となるので、上塗りを邪魔しないオリジナルの樹脂色で十分です。
高精細プラスチック(無地)|ProJet2500:20個版/2,947円(1個あたり@147円)、80個版/5,507円(@69円)と、1個あたりを計算すると半額まで下がりました。
ただし、この大きさ(X:92.042mm/Y:141.757mm/Z:12.784mm)では造形できない機械も多いらしく、造形可能素材の種類が半分くらいに減ってしまいました。

ちなみに、20個版で他の素材はというと、例えば、高精細プラスチック(着色)|ProJet2500:4,047円、クリアアクリル|AGILISTA:4,375円、高精細アクリル|3500HDMax:4,145円といった感じです。

お試しでもあり、あまりたくさん作っても不具合があったら全部無駄になるので、20個版で発注しました。


支払~検収

買い物カゴに入った注文は、通常のネット通販と同じに支払い手続きをします。
支払いの段階では、DMM.MakeからDMMグループ全体の決済システムの方に処理が移ります。決済手段は、個人取引では、クレジットカードかDMMポイントの2種類です。DMMポイントの購入は、コンビニ支払い等色々な支払手段に対応しています。

注文の確定、実際の製造開始、発送準備、発送完了と各時点で連絡メールが届きます。製造は、たくさんの注文の中での順番待ちでいつになるかわからないので、メールで開始連絡が来るとちょっとうれしいです。

後は、商品の到着を待って、中身を確認して終わりです。
外部サービスで作った3Dプリントの出来を楽しみましょう。


<今回の依頼品>
出来上がり写真(灰色の方は、比較用のMaestro/ATOM2.5/φ2.5mmの出力品)。
全体 表面 裏面
表面 裏面

これだけ精密に出来ていると素晴らしいの一言です。太さが1mmのコイル部分の再現などは驚異的です。

その一方で、手持ちの3Dプリンターで限界ぎりぎりで作ったものの塊感に比べると、ディテールがあっさりして見えるのは元データのせいでしょうか。


台車に取り付け

さっそく実際の台車にうまく合ってくれるかチェックします。

台車の横に3つ開いている穴の下2つに、パーツの裏面の出っ張りを差し込んで取り付けます。

取り付け前 取り付け時 下から

車軸の位置も部品と合っていていい感じです。
ちなみにこの部品の枠は、実車では台車をぐるっと全部囲んでいるのですが、ここでは連結用の部分と干渉してしまうので、真ん中を付けていません。

もう一つ必要な確認があります。
レール部品に台車を乗せたときにどこか接触していないかの確認です。通常のレールと違って、路面電車用のレール部品は、路面がレールの高さまで来ているので、台車との隙間はかなりシビアなものになります。

平面上 レールの上

一応良さそうですね。もっとも台車自体が自由に動くようにガタガタに取り付けられているので、これでも接触しないとは言い切れませんが。

設計修正なしで使っていけそうでよかったです。
ポッチをはめ込んだだけだと簡単に外れるので、実際に使う段には、接着剤(または粘着剤)で台車に固定して使います。