アルミケース加工(CNC他)
概要
加工内容
購入した汎用のアルミケース(
タカチ MXA3-11-11SS)は、ケース付きのキットに使われているものと同じ型番のケースです。また、各部の寸法と文字類の図面データもキットの設計者から公開されています。今回行う加工は、既に形が出来ている部品に図面通りに穴を開けて、そこに文字の表示もしてやることになります。
加工の方針検討
背面パネルの穴は丸だけでなく四角があります。回転する刃物で削ると四角の角は丸くなってしまいますので、直径の細い刃物を使ってなるべく角に近づけます。
逆に、削れる範囲ではなるべく太い刃物で削ったほうが短時間で刃物の傷みも少なくてすみます。
前後のパネルは、Φ2.0、3.0、4.0の3種類の太さの超硬スクエアエンドミル(2枚刃)を使って粗削りから仕上げまで削ることにします。
3Dモデルデータの作成
まず出来上がりの姿を3Dモデルで作成します。
図面がPDFファイルで、そのままではFusion360に取り込めないので、一旦2DデザインソフトのInkscapeに取り込んでSVGファイルとして保存。Fusion360のスケッチ画面上で、そのSVGファイルを挿入します。
図面をコピーし、必要な部分だけを残してスケッチを作成、押し出して立体の形状を作ります。
加工で直接使わない部分は無理に作る必要は無いので単純化した形状にしておきます
(本体底面の部品は実際には分割箇所が違いますが、穴開け位置の基準にする底面の端の輪郭と厚みが正しく再現できていれば問題ないです。また、両パネル部品の端が1箇所尖っていますが、なぜか何度やってもそこだけ丸い輪郭線が選択できなかったので、あきらめて作成しました)。
穴開け加工のNCデータ作成
加工データを作成するに当たって、参考書(「Fusion360操作ガイド CAM・切削加工編1&2(2019年版)」スリプリ(株式会社VOST))を読みながら作業を進めました(Fusion360のCAM機能についての参考書はこれぐらいしか見当たりませんでした)。
今は、CNC機の製造元のOriginalmindのHPで
Fusion360を使ったNCデータ作成と、
CNC制御ソフトの使い方が説明されているので、これが一番参考になると思います(この加工を行ったときは見ていませんでした。現行機種のRZ300/420に準じます。)。
当然ソフトの公式マニュアルがリファレンスになりますが、詳細すぎて作業のアウトラインはわかりにくいです。
加工原点(ワーク座標系)の設定
切削条件の設定
主軸回転速度(rpm)
刃物をセットした主軸(スピンドル)の回転速度です。
機械の能力によって回転数が決まってきます。RD300の場合は、3段プーリーをつけると3,400、5,600、10,000r/minが選べ、最高速が10,000回転/分になるので、今回は10,000rpmで設定も機械もセットします。ただし、モーターは変わらないので回転数を上げるとトルクは小さくなり、金属切削のような負荷の大きな場合にはどうかという気もします。
切削送り速度(mm/min)
1刃あたりの送り(mm)
刃物によって刃の枚数はいろいろですが、切削中に材料を削っているのは主に1枚です。その1枚分の切削量にあたります。
高さの設定
切削で刃物が移動するときや加工動作を始めるときなどの高さを設定します。
加工方法(種別)
ユーザーが設定した条件設定に従って、刃物をどんな風に動かして切削を行ってゆくかはソフトが自動で決めます。その際に使われるプログラムが何種類か設定されていて、切削内容に応じてユーザーが選択できます。
その他
シミュレーション
切削条件を設定したら、必ずシミュレーションして切削の様子をよく観察します。刃先がどのように動いて加工してゆくか(加工パス)はソフトが決めていますので、それを確認できるのはシミュレーションを通してになります。
切削加工
材料の固定
加工する材料の固定では、作業中に動かないことが重要ですが、今回はさらに固定する材料のX軸と機械のX軸の方向を一致させる必要があります。ずれていると穴が曲がって開いてしまいます。
2枚のパネルは、平たい金属板なので、両面テープでべったりと加工テーブルに貼り付けます。刃物が貫通するので間に樹脂(ケミカルウッド)の捨て板をかませてテーブルに傷がつくのを防ぎます。切削中に小さい部分でも剥がれると刃物を折ったりしかねないので、しっかりつけます。
機械のX軸と平行にパネルを取り付けるために、加工テーブルに貼り付けた捨て板に機械のマニュアル操作でY座標を変えずに浅めの穴(エンドミルの軸径)を2つ開けます。その穴にエンドミルを逆さに立てて、それに突き当てながらパネルを捨て板に貼り付けることで、機械のX軸方向と平行が取れた位置に固定ができます。
底板は、裏返しにして貼り付けるのが一番安定するのですが、刃物が移動中に両脇の部分にぶつかる可能性があり、かつ小さい穴2つを開けるだけなので、上下の部品をテープでしっかり組み合わせて、それごと捨て板に貼り付けて固定します。
加工原点合わせ
穴開け位置の精度はここで決まってしまうので、念を入れてXY軸方向の刃先の位置を調整します。
加工開始
加工結果
後加工(手作業)
CNC加工の確認、感想
出来上がって仮組みしてみると、それほどアラは見えません。開くべき穴は規定の位置に開いてますので、実際に使う上では問題ないでしょう。
パネル文字板作成(レーザー加工)
提供されている図面には、パネル面の文字もありますので、これをそのまま文字板に加工します。
全体組立